~ オリバー ~
町外れの料理店、このお店の屋根裏には行き場のない彷徨える霊達が棲んでおります。
今日はその霊達の中の一人の男の子のお話。
名前はオリバー。
いたずら好きで好奇心旺盛な少年の霊。
オリバーは毎年ハロウィンの時期になると仮装をした子供たちに紛れ、
町の家々を巡りお菓子を貰うのを楽しみにしています。
あるハロウィンの夜、この日も抱えきれないほどのお菓子を貰いオリバーは上機嫌
ふと、通りの向こうから歩いてくる魔女の仮装をした少女を見て、あるはずのない心臓が
飛び跳ねるような感覚になりました。
輝くような美しいブロンドの長い髪に透き通るような白い肌、潤んだような蒼い瞳をした
それはそれは美しい少女です。
オリバーは一目で少女に心を奪われてしまいます。
子供の二人、キッカケはなくてもあっという間に仲良くなりその日は夜遅くまで楽しい時間を
一緒に過ごしました。
その日からオリバーが考えることは少女のことばかり
ハロウィンが終わった後も少女の住む小高い丘の上にあるお屋敷に行っては隠れて様子を見ておりました。
毎晩屋敷に行ってるうちに少女は体が弱く病気がちだということ、そんな娘を心配した少女の両親は頻繁に、
医者を呼んでは診てもらってるということを知ります。
数か月経っても少女は元気になるどころか日に日に病状は悪くなるばかり、
オリバーは今にも命の灯が消えそうな少女に何もしてあげることが出来ません
ある夜、通いの医者が屋敷から出るのを見かけたオリバー。
医者は屋敷の門を出ると、人目を気にするようにキョロキョロと周りを窺い、
足早に歩き出しました。
オリバーはその様子を不審に思い、医者の跡を尾けました。
医者は背後を気にしながらオリバーの棲む料理店へと入っていきました。
窓から覗くと 医者は怪しげな男と店の端のテーブルに座り、
何やら顔を寄せ合い小声で話しこんでいます。
オリバーはテーブルにほど近い柱の陰に潜み男達の会話を盗み聞きしました。
どうやらこの二人、体の弱い家族を持つ裕福な家を見つけては医者の振りをして近づき病気を治すどころか、
悪くなるような薬を処方し、高い治療費をとるという詐欺師達でした。
話を聞いたオリバーは驚き、ネズミ顔の店主にこれまでの経緯を説明しました。
オリバーの話を聞き終えると店主は、ぼそっと「次回の晩餐会の材料になりそうだ」とニヤリと笑い、
そのまま店内へと入って行きました。
オリバーが訝しんで見ていると店主は男達のテーブルへと近づき、
『これはこれは!お客様はあの有名なお医者様ではないですか!!
こんな町外れの料理店へようこそ!』と深々と頭を下げました。
『特別なお客様には最高のディナーをご用意しておりますので、
ささ、遠慮なさらずにどうぞこちらへ』と奥の重厚な紅い扉の部屋へと二人を連れていきます。
突然の店主からの申し出に始めは躊躇していた二人でしたが、
すべてに強欲な二人、最高のディナーと聞き店主に促がされるまま奥の部屋の扉の中へと喜んで入っていきました。
オリバーは知っていました。
その部屋に入った者で出てきた者が一人もいないことを・・・。
少女を苦しめていた男達はいなくなりました。
医者達が行方知れずになってから、別の医者に診てもらった少女。
元気を取り戻しまた一緒にハロウィンを迎えられることを心待ちにしていたオリバー。
でも時すでに遅く、オリバーと店主の活躍の甲斐なく数日後少女は息を引き取りました。
オリバーは悲しくて悲しくてずっと泣いてばかりです
今年もまたハロウィンの時期がきました。
一緒に楽しむはずだった少女はいません。
オリバーは少女の面影を探して、
あの出会った場所へと行きました。
うつむきながら歩いていると、「オリバー!」と呼ばれる声が…。
顔を上げると…。
そこにはあの美しい少女が、
ハロウィンそれは霊をこの世に迎える万聖節の前夜祭。
これから二人はずっと一緒です
『Trick or Treat!』
オリバーの元気な声が聞こえます
~ Oliver ~
Directed by
TAKUYA MATSUMOTO
Assistant Director by
SHOGO MATSUMOTO
Ending Theme
”Fly me to the moon ”- Nat King Cole
Story Writer by
TAKUYA MATSUMOTO
Film Maker and Music by
SHOGO MATSUMOTO
Assistant Staff by
SHINA MAYUMI
YUKI NAKATA
FUMIHISA NAKANE
SACHIE HIRANO
MIKI AOYAGI
ERI MATSUMOTO
YUSHIN NAKATSUKASA
MASAKO SANPEI
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